Court Case

米国/ MetaBirkin事件

2022.12.28

スライド資料:MetaBirkin事件まとめ

 

<事案の概要>
原告Hermes InternationalとHermes of Paris, Inc.が、2022年1月14日、被告Mason Rothschild氏に対し、同氏による「METABIRKINS」というデジタル画像のNFTの販売等について、Hermes社の著名な商標である「BIRKIN」の商標権侵害等を理由に、差止、損害賠償等を求めて提訴した事件である(ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所)。

原告による請求原因は多岐にわたるが、そのうちの一つは、Hermes社の登録商標「BIRKIN」の侵害(被告が、「MetaBirkins」のマークの下でデジタル画像のNFTを宣伝・販売等し、Hermes社の許可を得ることなく登録商標「BIRKIN」を使用し、消費者に誤認・混同を生じさせたことによる商標権侵害)である。

事件は、未だ裁判所に係属中であるが、2022年5月5日に、裁判所は、被告による請求却下の申立て(Motion to Dismiss)を認めない判断を下した。

 

被告は、上記の請求却下の申立てにおいて、要旨、次のように主張した。

■ Rothschild氏が販売しているのは、「BIRKIN」バッグのデジタ画像をNFTに紐づけた「アート」であり、その「アート」作品のタイトルとして「MetaBirkins」を使用しており、商品の出所識別のために使用しているのではない。

■ したがって、Rothschild氏による「MetaBirkins」の使用は、First Amendment(表現の自由)の保護を受け、商標権侵害の判断にあたっては、Rogers v. Grimaldi事件で示された「Rogersテスト」が適用される。

■  Rogersテストを適用すると、Hermesの請求は却下されるべき。

 

<裁判所の判断>
上記に対して、裁判所は、要旨、次のような理由により、被告の却下申立てを認めない判断を下した。

■ Rothschild氏が販売するハンドバッグのデジタル画像は、芸術的表現の一形態を構成しうるから、本件の商標権侵害の判断に当たって、少なくとも部分的には、Rogersテストが適用される
■ しかし、Hermesの訴状には、Rogersテストにおける「芸術的な関連性」の欠如や、「明示的なミスリード(explicit misleadingness)」に関する十分な事実の主張が含まれている

 

上記の裁判所の判断を受けて、原告、被告の双方より、サマリージャッジメントを求める申立てがなされた。今後、サマリージャッジメントにより事件が終結するのか、あるいはトライアルに進んでどのような審理・判断が行われるのか、事件の行方が注目される。

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